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"断食明け"の風景 ?

5時だったか6時だったかまだ薄暗いうち彼の家に向かいますと、到着するや表の通りに出るようにいわれます。近所の民家からも正装をし巻物を持った人たちが出てまいりました。何が始まるのか判らないのですが、どちらにせよ私がいてはいけないような気がいたします。

「ミキも参加しなさい」というので「何に?」と切り出す間もなく背中を押され整列の中に。続いて拡声器によるイスラムの祈りが町内に響き渡るやそこにいる皆が一斉に立ったり座ったり拝んだりでとても私が出る幕ではありません。こんな緊迫した気分で新年が明けるとはまさか思いもしなかったのですが、友人が隣から「写真を撮ってもいいぞ」と言ってくれたのでとりあえずそーっと一枚。

"新年明けましておめでとう"に相当するイスラム新年の言葉があります。"身も心もお許しください"と懺悔の気持ちに満ちた言葉であります。この言葉を掛け合うことで、過去一年の過ちが許され、リセットされた状態で新年の日を迎えることができるのです。私も彼らに真似て、すれ違う近隣の方々に同様の言葉を掛けたのですが、この宗教感に満ち満ちた空気の中で当然私の言葉にはまったく重みがありません。

友人の家に通されると、彼のお姉さん、その娘さんたちが、さっそく食事の用意を始めます。それまでの一ヶ月間、朝の4:30くらいから夕方18:30くらいまで何も口にしない生活を続けていたので、こんな明るい時間に本当に食べてもいいのか、という違和感があります。冷蔵庫から冷たい水が出されこれにシロップを混ぜるか?とのジェスチャー。イスラム教徒ですから宴席にビールはありません。しかし、今日はこの真っ赤なシロップで酔いそうな気がします。ずらりと並べられたいくつものインドネシア料理。普通なら、お招きを受けたものがけして言わないような言葉もついついこぼれてしまいます。「これ本当に、今、食べてもいいんですか。。」  

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